クラウンスポーツは人気ないって本当？納期遅れやユーザー層の変化から見る評価の分かれ目

トヨタ更新日：2025/06/15 公開日：2025/06/15

クラウンスポーツについて「人気がない」という声を耳にすることがありますが、実際のところはどうなのでしょうか。従来のクラウンとは大きく異なるSUVスタイルのデザインで登場したクラウンスポーツは、確かに評価が分かれる車種となっています。

月間販売目標2000台に対して実際は1500台前後で推移している現状や、一時的な受注停止、そして長期化する納期など、さまざまな要因が「人気がない」という印象を生んでいるようです。しかし、その背景には単純な人気不足だけでなく、生産体制の問題やユーザー層の変化といった複雑な事情が絡んでいます。

今回は、クラウンスポーツの人気について、納期遅れの実情やユーザー層の変化、実際の評価などを詳しく見ていきながら、本当のところを探ってみましょう。高級車の購入を検討されている方にとって、参考になる情報をお届けします。

クラウンスポーツの人気が低迷している理由

価格の高さが購入をためらわせる要因

クラウンスポーツの価格設定は、多くの購入検討者にとって大きなハードルとなっています。最も安いグレードでも約590万円からという価格帯は、従来のクラウンユーザーにとっても決して安くない金額です。

特にPHEVモデルになると700万円を超える価格となり、この価格帯では国内外の強力な競合車種との比較が避けられません。メルセデス・ベンツGLCが598万円から、BMW X3が615万円から、レクサスRXが678万円からという状況を考えると、「この価格を出すなら」という心理が働いてしまうのも理解できます。

実際のユーザーレビューでも「価格に見合った価値を感じられない」という声が多く見られ、特に実用性の面で同価格帯の競合車種と比較して劣る部分があることが指摘されています。

実用性の低さがファミリー層に響かない

クラウンスポーツのスポーティなデザインは魅力的である一方で、実用性の面では課題を抱えています。特に後部座席の狭さやラゲッジスペースの制約は、ファミリー層にとって大きなマイナスポイントとなっています。

営業担当者からも「カローラですらゴルフバッグが横に置けるのに、クラウンスポーツは置けない」という話が出るほど、荷室の実用性に問題があることが指摘されています。これは、従来のクラウンユーザーが求める実用性とは大きくかけ離れた仕様といえるでしょう。

また、全幅1880mm近いワイドボディは、日本の道路事情や駐車場事情を考えると取り回しに不安を感じる方も多く、これも購入をためらう要因の一つとなっています。

従来のクラウンらしさが失われたという声

クラウンスポーツに対する評価が分かれる最も大きな理由は、従来のクラウンが持っていた「威厳」や「品格」といった要素が薄れたと感じる人が多いことです。長年クラウンを愛用してきたユーザーにとって、SUVスタイルのクラウンスポーツは「クラウンらしさがない」と映ってしまうのです。

従来のクラウンシリーズは、主に40代から60代の中高年層、特にビジネスエリートや企業経営者を中心に支持されてきました。しかし、クラウンスポーツは30代から40代のアクティブなライフスタイルを持つユーザーをターゲットに据えたため、従来のユーザー層との間にギャップが生まれています。

この方向転換により、「躍動感」や「楽しさ」といった新しい要素は加わったものの、クラウンブランドが長年築いてきた伝統的な価値観を重視するユーザーからは受け入れられにくい状況となっています。

納期遅れが起きている背景と現状

生産ラインのキャパシティ不足

クラウンスポーツの納期遅れの主な原因の一つは、生産ラインのキャパシティが限られていることです。現在の納期は3〜4ヶ月程度となっており、契約から納車まで相当な時間を要する状況が続いています。

特に人気グレードである「SPORT Z」に注文が集中していることで、生産ラインに負担がかかっています。一定数の注文が生産能力を超えてしまうことで、納期の長期化が避けられない状況となっているのです。

ただし、人気グレードは生産ラインがフル回転で動いているため、予定よりも多く生産できることもあり、実際には予定より早く納車されるケースも報告されています。

半導体不足などの部品供給問題

世界的な半導体不足や輸送の遅延は、自動車業界全体に大きな影響を与えており、クラウンスポーツも例外ではありません。特にハイブリッド車やPHEVのような電装部品を多く使用するモデルでは、部品供給の遅れが直接的な影響を及ぼしています。

PHEVモデルの納期が5ヶ月以上になる場合があるのも、こうした部品供給の問題が大きく関係しています。使用する半導体部品が多いグレードほど納期が長くなる傾向があり、これが全体的な納期遅れにつながっています。

また、地域や販売店ごとの販売計画の違いも影響しており、特定の地域では人気モデルの需要が集中するため、他の地域に比べて納期が長くなることもあります。

ユーザー層の変化とその影響

従来の40〜60代から30〜40代へのシフト

クラウンスポーツの登場により、ユーザー層に大きな変化が見られています。従来のクラウンシリーズが主に40代から60代の中高年層に支持されてきたのに対し、クラウンスポーツは30代から40代のより若い層をターゲットとしています。

このターゲット層の変化は、トヨタのブランド戦略の進化を反映したものです。スポーティなデザインと走行性能を強調することで、新たな顧客層を開拓しようとする意図が明確に表れています。

しかし、この変化により従来のクラウンユーザーとの間にギャップが生まれ、一部では「クラウンらしさが失われた」と感じる声も上がっています。年齢層の変化は、単なる数字の変化以上に、求められる価値観や使用目的の変化を意味しているのです。

ビジネスエリート層から若いアクティブ層へ

従来のクラウンシリーズは、ビジネスエリートや企業経営者といった社会的地位の高い層に支持されてきました。これらのユーザーは、クラウンに「威厳」や「品格」、そして実用性を求めていました。

一方、クラウンスポーツがターゲットとする若いアクティブ層は、「躍動感」や「楽しさ」といった要素により価値を見出します。週末のドライブやアウトドア活動を楽しむライフスタイルを持つ層が、新たなクラウンの顧客として想定されています。

この変化により、クラウンブランドは新しい魅力を獲得した一方で、従来の顧客層が求める価値観とのバランスを取ることが難しくなっています。結果として、どちらの層にも完全には響かない中途半端な位置づけになってしまう可能性も指摘されています。

ファミリー層が他の車種に流れる現象

クラウンスポーツのスポーティなデザインによる実用性の制約は、ファミリー層の離脱を招いています。後部座席の居住性やラゲッジスペースの狭さは、家族を持つ層にとって大きなデメリットとなっています。

従来のクラウンを愛用していたファミリー層の多くが、より実用性の高いSUVやミニバンに流れてしまう現象が起きています。これにより、クラウンスポーツのターゲットユーザーが大幅に絞られてしまう結果となっています。

特に、長時間移動時の快適性を重視するファミリー層にとって、後部座席の狭さは致命的な問題です。この点で競合する他のSUVモデルと比較して明らかに劣っているため、実用性を重視するユーザーは他の選択肢を検討せざるを得ない状況となっています。

実際のユーザー評価を詳しく見てみる

良い評価のポイント

内装の高級感と快適性

クラウンスポーツの内装については、多くのユーザーから高い評価を得ています。特にブラウンやブラックの内装が人気で、高級感を演出する仕上がりとなっています。前席の快適性は特に評価が高く、長距離運転でも疲れにくいという声が多く聞かれます。

シートの質感や座り心地については、さすがクラウンブランドと感じさせる仕上がりで、通勤や旅行で重宝されているとの評価が多数寄せられています。また、操作系の配置や使い勝手についても、慣れれば使いやすいという意見が見られます。

ただし、一部でプラスチック素材が多用されている部分については、価格を考えると物足りなさを感じるという指摘もあります。600万円を超える車としては、もう少し質感の向上を期待する声も聞かれます。

静粛性の高さと乗り心地

クラウンスポーツの静粛性については、多くのユーザーから高く評価されています。特にPHEVモデルでは、電気走行時の静かさが印象的で、高級車らしい上質な走行感覚を味わえると好評です。

乗り心地についても「柔らかすぎず硬すぎず」でバランスが取れているという評価が多く見られます。日常使いでの快適性と、スポーツ走行時の安定性を両立させた設定が評価されています。

ただし、低速走行時の突き上げ感や振動については、一部のユーザーから不満の声も上がっています。路面状況によっては、もう少し滑らかな乗り心地を期待する声もあります。

スポーティなデザインの魅力

クラウンスポーツの最大の魅力として多くのユーザーが挙げるのが、そのスポーティなデザインです。低重心で流麗なシルエットや、大型グリルと特徴的なヘッドライトが作り出すアグレッシブな印象は、多くの人を魅了しています。

「街中でも目を引く」「所有感がある」といった声が多く聞かれ、見た目の美しさが運転の楽しさを向上させているという評価も見られます。従来のクラウンとは一線を画す斬新なスタイリングが、新鮮さを感じさせています。

購入の決め手となったという声も多く、デザインの魅力がクラウンスポーツの大きなセールスポイントとなっていることは間違いありません。

悪い評価のポイント

後部座席の狭さとラゲッジスペースの問題

クラウンスポーツに対する不満として最も多く挙げられるのが、後部座席の狭さとラゲッジスペースの制約です。スポーティなデザインを優先した結果、実用性が犠牲になってしまった部分が明確に表れています。

特に長時間移動時の後部座席の快適性については、多くのユーザーから不満の声が上がっています。家族での利用を考えている方にとって、この点は大きなマイナス要素となっています。

荷室についても、ゴルフバッグが横に置けないなど、従来のクラウンユーザーが期待する実用性を満たしていない部分があります。この価格帯の車としては、もう少し実用性を重視してほしいという声が多く聞かれます。

メーター表示の反応の遅さ

意外に多くのユーザーから指摘されているのが、メーター内の表示切替の遅さです。「ワンテンポどころかスリーテンポぐらい遅れる」という具体的な指摘もあり、600万円を超える車としては考えられないレベルの遅さだという厳しい評価もあります。

この問題は、日常的な運転において頻繁に感じられる不満要素となっており、高級車としての品質に疑問を抱かせる要因となっています。デジタル操作系の使い勝手については、慣れが必要という意見もありますが、基本的な反応速度の問題は改善が求められる部分です。

特にタコメーターの表示切替など、運転に関わる重要な情報の表示が遅れることは、安全面でも問題があると指摘する声もあります。

価格に見合わない部分的なチープ感

高級車としての価格設定にも関わらず、一部にチープな素材が使用されていることへの不満も多く聞かれます。内装の一部にプラスチック感が強い部分があり、高級感を求めるユーザーには物足りなさを感じさせています。

「この価格なら」という期待値の高さもあり、細かい部分での質感の低さが目立ってしまう傾向があります。競合する輸入車やレクサスと比較した際に、コストパフォーマンスに疑問を持つユーザーも少なくありません。

特に、高性能である一方で価格が高く、実用性で劣る部分があることから、総合的な価値として納得できないという意見も見られます。

高級車市場での位置づけと競合比較

高級車需要の回復傾向

クラウンスポーツの受注状況からは、高級車需要の回復傾向が見て取れます。経済の回復とともに、高級車市場も活気を取り戻しつつあり、高額グレードの選択率の高さや新規購入層の増加が確認されています。

この傾向は、クラウンスポーツだけでなく他の高級ブランドも含めた市場全体の活性化を示しており、今後しばらく続く可能性が高いと予測されています。消費者の購買意欲の回復が、高級車市場全体を押し上げている状況です。

また、環境性能重視の傾向も強まっており、PHEVモデルの高い選択率や燃費性能への関心の高まりが見られます。これは、環境に配慮した車づくりの重要性が増していることを示しています。

他社競合モデルとの価格・性能比較

クラウンスポーツの価格帯では、国内外の強力な競合車種との厳しい競争が避けられません。以下の表で主要な競合車種との比較を見てみましょう。

車種	価格帯	特徴
クラウンスポーツ	590万円〜	スポーティデザイン、ハイブリッド専用
メルセデス・ベンツ GLC	598万円〜	確立されたブランド力、高い実用性
BMW X3	615万円〜	優れた走行性能、プレミアム感
レクサス RX	678万円〜	国産高級ブランド、高い信頼性

この価格帯では、長年の歴史と確立されたステータスを持つ輸入車やレクサスとの比較が避けられず、ブランド力の面でクラウンスポーツは劣勢に立たされる可能性があります。

特に実用性の面では、後部座席の広さや荷室容量が同クラスのSUVと比較して必ずしも優れているわけではないため、高額な価格に見合った価値を見出せない消費者も少なくありません。

ブランドロイヤリティの強さ

一方で、クラウンスポーツの成功は、トヨタブランドへの強いロイヤリティを示しています。長年培われてきた信頼関係が、新モデルの受け入れにも大きく寄与しているのです。

リピート購入者の多さやブランド内での乗り換え需要の高さ、SNSなどでの肯定的な口コミの広がりなど、ブランドロイヤリティの強さが購買決定に大きな影響を与えていることが確認できます。

また、新しいコンセプトの導入によって、ブランドイメージの刷新にも成功しており、60年以上の歴史を持つ日本の高級車ブランドとしての価値を維持しながら、新たな魅力を加えることができています。

納期遅れを避けるための購入戦略

契約時期の見極め方

契約時期の選択も納期短縮には重要な要素です。特に年度末や新年度の開始時期は需要が集中しやすく、生産ラインに負担がかかるため納期が延びる可能性があります。

こうした繁忙期を避けて契約することで、納期遅れを防ぐことができます。また、マイナーチェンジなどのタイミングも考慮に入れる必要があり、2025年秋に予定されているマイナーチェンジが受注再開の節目となる可能性が高いとされています。

現在は多くのディーラーで新規受注が停止している状況が続いているため、受注再開のタイミングを見極めることが重要です。

ディーラーとの効果的なコミュニケーション

納期短縮のためには、ディーラーとのコミュニケーションを密に取ることが効果的です。ディーラーは生産スケジュールをリアルタイムで把握しており、最新の状況を教えてくれることがあります。

複数のトヨタ販売店で見積もりと在庫確認を同時進行することも有効な戦略です。販売店によって発注枠やキャンセル在庫が異なるため、1店舗に絞るよりもチャンスが広がります。

また、キャンセル車が発生した場合に連絡をもらえるよう依頼しておくことで、納期を短縮するチャンスを得られることもあります。「納期を優先した仕様で探したい」とあらかじめ伝えておくことで、即納車の提案が受けられることもあります。

クラウンスポーツの今後の展開予想

環境性能重視の傾向への対応

クラウンスポーツの今後の展開において、環境性能の向上は避けて通れない課題です。PHEVモデルの人気の高さは、消費者の環境意識の高まりを示しており、この傾向は今後さらに加速すると予想されます。

2027年に予定されているフルモデルチェンジでは、完全電気自動車（BEV）モデルの追加が最も注目されている変更点の一つとなっています。世界的な脱炭素化の流れが加速する中、トヨタも電動化戦略を積極的に推進しており、クラウンスポーツもその一翼を担うことになるでしょう。

BEVモデルの導入により、走行時の排出ガスはゼロとなり、環境意識の高い消費者層からの支持も期待されます。これは、クラウンスポーツが環境性能において最先端を走ることを意味し、将来的な自動車市場での競争力を大きく高める要素となるでしょう。

ターゲット層の再調整の可能性

現在のクラウンスポーツは、従来のクラウンユーザーと新しいターゲット層の間で評価が分かれている状況です。今後のマイナーチェンジやフルモデルチェンジにおいて、ターゲット層の再調整が行われる可能性があります。

2025年7月に発売予定の一部改良では、新たなエントリーグレード「G」が追加され、価格は520万円からと大幅に引き下げられることが発表されています。これは、より幅広い層にアピールするための戦略的な価格設定と考えられます。

また、クラウン生誕70周年を記念した特別仕様車の設定など、ブランドの歴史と新しさを両立させる取り組みも見られます。これらの動きは、従来のクラウンファンと新しいユーザー層の両方に訴求しようとする意図の表れといえるでしょう。

実用性向上への改良ポイント

ユーザーからの不満が多い実用性の問題については、今後の改良で対応される可能性があります。特に後部座席の居住性やラゲッジスペースの拡大は、ファミリー層の支持を得るために重要な改良ポイントとなるでしょう。

2025年に予定されているマイナーチェンジでは、デザインの刷新だけでなく、装備の充実や走行性能の向上といった実質的な価値向上が期待されています。内装の質感向上や先進技術のアップデートも含まれる可能性があります。

また、メーター表示の反応速度の改善など、ユーザーから指摘されている細かな不満点についても、今後のアップデートで対応される可能性があります。これらの改良により、クラウンスポーツの総合的な魅力がさらに高まることが期待されます。

まとめ：クラウンスポーツの評価が分かれる理由

クラウンスポーツが「人気がない」と言われる背景には、単純な人気不足ではなく、複雑な要因が絡み合っています。価格の高さや実用性の制約、従来のクラウンらしさの変化などが評価を分ける要因となっている一方で、スポーティなデザインや走行性能については高く評価されています。納期遅れの問題も、生産体制の制約や部品供給の問題が主な原因であり、必ずしも人気不足を意味するものではありません。

今後のマイナーチェンジやフルモデルチェンジにより、実用性の向上や価格戦略の見直しが行われれば、より多くのユーザーに受け入れられる可能性があります。高級車の購入を検討される際は、実際に試乗して自分のニーズに合うかどうかを確認することが重要です。クラウンスポーツは確かに評価が分かれる車種ですが、それは新しい挑戦をしている証拠でもあるのです。