マツダ ロードスター990Sは、軽量化にこだわった特別なグレードです。しかし、その特徴的な仕様ゆえに「買って良かった」と感じる人と「こんなはずじゃなかった」と後悔する人に分かれやすいクルマでもあります。
990Sは他のグレードとは明らかに違う個性を持っています。軽さを追求したことで生まれる独特の走り味は、まさに好みが分かれるポイントといえるでしょう。
この記事では、990Sの走り・乗り心地・使い勝手を詳しく解説しながら、どんな人が買って満足できるのか、逆にどんな人は避けた方がいいのかを具体的にお伝えします。高級スポーツカーの購入を検討している方にとって、きっと参考になる内容です。
購入前に知っておきたいポイントを整理して、あなたにとって990Sが最適な選択かどうか判断していきましょう。
ロードスター990Sとは?他のグレードとの違いを知っておこう
990Sの基本スペックと価格帯
ロードスター990Sは、車名にもなっている通り車両重量990kgを実現した軽量グレードです。エンジンは1.5リッター SKYACTIV-Gで、最高出力132PS、最大トルク152Nmを発生します。トランスミッションは6速マニュアルのみの設定となっています。
価格は270万円からとなっており、ロードスターのラインナップの中では中間的な位置づけです。この価格帯でありながら、軽量化のための特別な仕様が盛り込まれているのが大きな特徴といえます。
通常のSグレードとの主な違い
990SとベースとなるSグレードの最も大きな違いは車両重量です。Sグレードが1,010kgなのに対し、990Sは20kg軽い990kgを実現しています。たった20kgと思うかもしれませんが、軽量なロードスターにとってこの差は体感できるレベルの変化をもたらします。
軽量化のために、快適装備の一部が簡素化されています。具体的には、エアコンの仕様変更やインフォテインメント機能の制限などが行われており、これが後述する「使い勝手」の部分に影響してきます。
軽量化にこだわった理由
マツダが990Sで軽量化にこだわったのは、ロードスターの原点である「軽いことによる楽しさ」を追求するためです。重量の軽減は、加速性能の向上だけでなく、ブレーキング性能やコーナリング性能の向上にも直結します。
また、軽量化によって燃費性能も向上し、環境性能とスポーツ性能を両立させることができます。990Sの燃費は16.8km/L(WLTCモード)となっており、スポーツカーとしては優秀な数値を記録しています。
ロードスター990Sの走りの特徴|軽さが生む独特の運転感覚
バネ下軽量化がもたらす走りの変化
990Sでは、バネ下重量の軽減にも力が入れられています。これにより、路面からの入力に対するレスポンスが格段に向上し、まるでクルマが路面に吸い付くような感覚を味わえます。
特に低速域でのハンドリングの軽快さは、他のグレードとは明らかに異なる特徴です。ちょっとしたステアリング操作にも敏感に反応し、ドライバーの意図がダイレクトにクルマに伝わる感覚があります。
KPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)の効果
990Sには、マツダが開発したKPC(キネマティック・ポスチャー・コントロール)が搭載されています。これは、コーナリング時にリアルタイムでブレーキ制御を行い、車体の姿勢を安定させる技術です。
興味深いのは、この技術による重量増加が1グラムもないということです。ソフトウェアによる制御のみで実現されており、990Sの軽量化コンセプトを損なうことなく安全性を向上させています。
低速域から感じられる軽快感
990Sの魅力は、高速域だけでなく低速域でも十分に感じられることです。街中での発進加速や、駐車場での取り回しなど、日常的なシーンでも軽量化の恩恵を実感できます。
エンジンの負担が軽減されることで、アクセルレスポンスも向上しており、踏んだ瞬間にクルマが反応する気持ち良さがあります。これは重いクルマでは味わえない、軽量スポーツカーならではの魅力といえるでしょう。
ワインディングでの安定性
山道などのワインディングロードでは、990Sの真価が発揮されます。軽量な車体とKPCの組み合わせにより、コーナリング時の安定性が大幅に向上しています。
ただし、オーナーの声によると「物凄くロールが大きいのでそこそこスピードを出して峠を運転すると怖い」という意見もあります。990Sは高速域よりも、50km/h程度でゆっくりと峠を流すような走り方に適しているようです。
990Sの乗り心地は実際どうなの?街乗りから高速まで
街中での快適性
意外に思われるかもしれませんが、990Sの街乗りでの乗り心地は一般的な乗用車並みの快適さがあります。足回りが柔らかく設定されているため、段差や路面の凹凸を上手に吸収してくれます。
ソフトトップ仕様のため、ある程度の風切り音や外部からの音は入ってきますが、会話ができないレベルではありません。日常使いにおいて、特別な不便さを感じることは少ないでしょう。
高速道路での疲労感
高速道路での長距離走行については、990Sの軽量な車体が影響することがあります。風の影響を受けやすく、横風が強い日などは少し神経を使う場面もあるかもしれません。
ただし、エンジンの負担が軽いため燃費性能が良く、給油回数を減らせるメリットもあります。実際のオーナーによると、年間の維持費は39万3400円程度とスポーツカーとしては比較的抑えられているようです。
同乗者の評価
990Sの同乗者からの評価は概ね良好です。乗り心地で不満を言われることは少ないとのオーナーの声があります。ただし、乗り込みにくさは避けられない問題で、腰が悪い人や体の固い人には少し辛いかもしれません。
シートについては「すごくレベルが低い」「軽さだけに特化している」という厳しい評価もあります。長時間のドライブでは、シートの質が気になる可能性があります。
長距離ドライブでの実用性
990Sでの長距離ドライブは、目的によって評価が分かれるところです。純粋にドライビングを楽しむことが目的であれば、軽快な走りを長時間味わえる魅力があります。
一方で、快適性を重視した移動手段として考えると、装備の簡素化や遮音性能の限界が気になる場面もあるでしょう。特に高速道路での長時間走行では、疲労感を感じやすいかもしれません。
990Sの装備面での割り切り|何が省かれているか
快適装備の簡素化
990Sでは軽量化のために、いくつかの快適装備が簡素化されています。これは重量削減という明確な目的があってのことですが、日常使いでは不便を感じる場面もあるかもしれません。
具体的にどのような装備が変更されているかを事前に確認し、自分の使い方に影響がないかチェックしておくことが大切です。特に、普段使いをメインに考えている方は注意が必要でしょう。
インフォテインメント機能の制限
最新のロードスターではワイヤレス接続のApple CarPlayに対応していますが、990Sではインフォテインメント機能に一部制限があります。スマートフォンとの連携機能を重視する方は、事前に確認しておくことをおすすめします。
ただし、これらの制限は軽量化という明確な目的があってのことです。走りの楽しさを最優先に考える方にとっては、むしろ余計な装備が省かれていることを評価できるかもしれません。
エアコンやシートの仕様
990Sのエアコンは、他のグレードと比べて仕様が変更されています。基本的な冷暖房機能は問題ありませんが、細かな温度調整や風量調整で違いを感じる可能性があります。
シートについても軽量化が図られており、前述の通りオーナーからは厳しい評価もあります。座り心地や長時間の快適性よりも、軽さを優先した設計となっています。
遮音性能について
ソフトトップ仕様の990Sでは、遮音性能に限界があります。高速走行時の風切り音や、雨天時の音などは、ハードトップ車と比べると気になる場面があるでしょう。
ただし、これはオープンカーとしての特性でもあり、開放感とのトレードオフと考える必要があります。音が気になる方は、ハードトップ仕様の他のグレードを検討することをおすすめします。
ロードスター990Sで後悔する人の特徴
普段使いメインで考えている人
990Sは軽量化のために快適装備が簡素化されているため、普段使いをメインに考えている人は後悔する可能性があります。通勤や買い物など、日常的な移動手段として使いたい方には向いていないかもしれません。
特に、エアコンの仕様変更やシートの質の問題は、毎日使う場合には大きなストレスになる可能性があります。週末のドライブがメインという使い方であれば問題ありませんが、デイリーユースには不向きといえるでしょう。
快適性を重視する人
車内の静粛性や乗り心地の良さを重視する人にとって、990Sは期待に応えられない可能性があります。ソフトトップによる遮音性能の限界や、軽量化優先のシート設計は、快適性を求める人には物足りないでしょう。
また、インフォテインメント機能の制限も、最新の車載技術を期待している人には不満の原因となるかもしれません。快適性を重視するなら、他のグレードを検討することをおすすめします。
同乗者を頻繁に乗せる人
990Sは2シーターのスポーツカーですが、同乗者を頻繁に乗せる予定がある人は注意が必要です。乗り込みにくさや、長時間座っていると疲れやすいシートは、同乗者にとってストレスになる可能性があります。
特に年配の方や体の不自由な方を乗せる機会が多い場合は、990Sは適していないでしょう。同乗者の快適性も考慮するなら、より快適装備が充実したグレードを選ぶべきです。
装備の充実を求める人
最新の安全装備や快適装備の充実を求める人にとって、990Sは物足りない選択肢となるでしょう。軽量化のために省かれた装備は、便利さや安心感を重視する人には大きなマイナスポイントです。
装備の充実度を重視するなら、価格は上がりますが上位グレードを選ぶか、他のメーカーの同クラス車両を検討することをおすすめします。990Sは装備よりも走りの純粋さを求める人向けのクルマです。
990Sを買って満足する人の特徴
走りの楽しさを最優先にする人
990Sで最も満足できるのは、走りの楽しさを何よりも重視する人です。軽量化によって得られる軽快なハンドリングや、ダイレクトな操縦感覚は、他では味わえない魅力があります。
「ノーマルのマフラー音、エンジン音は静か過ぎてスポーツカーらしさに欠ける」という声もありますが、これも「門戸の広いスポーツカー」としての990Sの特徴といえるでしょう。純粋な走りの楽しさを求める人には最適です。
軽量スポーツカーの魅力を理解している人
軽量スポーツカーの魅力を理解し、そのために多少の不便さを受け入れられる人は990Sで満足できるでしょう。重量の軽さがもたらす恩恵を、日常のあらゆる場面で感じ取れる感性があれば、990Sの価値を十分に享受できます。
軽さは正義という考え方に共感できる人にとって、990Sは理想的な選択肢となるはずです。数値では表せない軽快感や機敏さを重視する人には、間違いなくおすすめできるクルマです。
セカンドカーとして使う人
990Sは、セカンドカーとして週末のドライブや趣味の走行に使う人に最適です。普段は実用的なクルマを使い、楽しみたい時だけ990Sに乗るという使い方であれば、装備の簡素化も気になりません。
むしろ、余計な装備がない分だけ軽量で、純粋な走りを楽しめることを評価できるでしょう。セカンドカーとしての990Sは、まさに理想的な使い方といえます。
マツダの「人馬一体」思想に共感する人
マツダが掲げる「人馬一体」の走りに共感し、その思想を体現したクルマを求める人には990Sがぴったりです。ドライバーとクルマが一体となって走る感覚を重視する人にとって、990Sは最高の相棒となるでしょう。
KPCなどの最新技術も、重量増加なしに安全性を向上させるという、まさに「人馬一体」思想の体現といえます。マツダの哲学に共感できる人には、990Sは特別な意味を持つクルマになるはずです。
990Sと他グレード(S・RS・NR-A)との比較
価格と装備のバランス
990Sの価格270万円は、ロードスターのラインナップの中では中間的な位置づけです。ベースのSグレードと比べると、軽量化のための特別仕様が盛り込まれている分、価値があると考えられます。
上位グレードのRSと比べると装備は簡素化されていますが、その分軽量で純粋な走りを楽しめます。NR-Aとの比較では、990Sの方が30万円高くなりますが、快適装備と安全装備の差を考えると妥当な価格差といえるでしょう。
グレード | 価格 | 車両重量 | 主な特徴 |
---|---|---|---|
990S | 270万円 | 990kg | 軽量化特化、快適装備簡素化 |
S | 約250万円 | 1,010kg | バランス重視 |
RS | 約300万円 | 1,020kg | 装備充実、スポーツ性能向上 |
NR-A | 約240万円 | 1,010kg | レース向け、装備最小限 |
走行性能の違い
走行性能では、990Sの軽量化による恩恵が最も顕著に現れます。同じエンジンを搭載していても、20kgの軽量化により加速性能やブレーキング性能、コーナリング性能すべてで優位性があります。
NR-Aも軽量化が図られていますが、990Sの方がより日常使いに配慮された設計となっています。純粋なレース向けのNR-Aに対し、990Sは「軽量化と実用性のバランス」を取ったグレードといえるでしょう。
使い勝手の差
使い勝手では、Sグレードが最もバランスが取れています。990Sは軽量化のために一部装備が簡素化されているため、日常使いでは不便を感じる場面があるかもしれません。
RSは装備が最も充実しており、快適性と走行性能を両立させたい人に適しています。NR-Aは装備が最小限のため、レースやサーキット走行がメインの人向けです。
どのグレードがどんな人に向いているか
990Sは「軽量化による走りの楽しさを重視し、多少の不便さは受け入れられる人」に最適です。セカンドカーとして使う人や、週末のドライブがメインの人には特におすすめできます。
日常使いメインならSグレード、装備の充実を求めるならRS、レース活動がメインならNR-Aという選び方が基本となるでしょう。自分の使い方と優先順位を明確にして選ぶことが大切です。
990S購入前にチェックしたいポイント
試乗で確認すべき項目
990Sの購入を検討している場合は、必ず試乗して以下のポイントを確認しましょう。まず、軽量化による走りの違いを実際に体感することが重要です。低速域での軽快感や、ステアリングレスポンスの良さを確認してください。
シートの座り心地も重要なチェックポイントです。オーナーからは厳しい評価もあるため、自分の体型や感覚に合うかどうか十分に確認しましょう。また、乗り込みやすさや、同乗者の快適性も実際に確認することをおすすめします。
使用シーンの想定
購入前に、990Sをどのような場面で使うかを具体的に想定しておくことが大切です。通勤メインなのか、週末のドライブメインなのか、サーキット走行も考えているのかによって、990Sの適性は大きく変わります。
特に、同乗者を乗せる頻度や、長距離ドライブの予定なども考慮に入れましょう。990Sの特性を理解した上で、自分の使い方にマッチするかどうか慎重に判断することが後悔しないためのポイントです。
予算と維持費の検討
990Sの購入価格270万円に加えて、年間の維持費も考慮に入れる必要があります。実際のオーナーによると、年間維持費は約39万3400円となっています。これにはガソリン代、保険料、税金、メンテナンス費用などが含まれます。
スポーツカーとしては比較的抑えられた維持費ですが、それでも月割りすると約3万3000円程度の出費となります。購入前に、この維持費を継続的に負担できるかどうか確認しておきましょう。
リセールバリューについて
990Sは軽量化という特別な仕様のため、将来的な希少価値は高いと予想されます。特に、マツダがロードスターの軽量化に本格的に取り組んだ記念すべきモデルとして、コレクション性も期待できるでしょう。
ただし、リセールバリューは市場の状況によって変動するため、過度な期待は禁物です。あくまでも「乗って楽しむ」ことを主目的として購入することをおすすめします。
実際のオーナーの声|990Sの満足度と不満点
購入して良かった点
実際のオーナーからは「50キロ程度でゆっくり峠を流すととても気持ちいい」という声があります。これは990Sの軽量化による恩恵が、高速域だけでなく低中速域でも十分に感じられることを示しています。
また、「スポーツカーでこの維持費はやっぱり安い方」という評価もあり、経済性の面でも満足度が高いことがわかります。軽量化による燃費の良さが、維持費の抑制に貢献しているようです。
想定外だった点
一方で「物凄くロールが大きいのでそこそこスピードを出して峠を運転すると怖い」という声もあります。990Sは高速域でのハードな走行よりも、低中速域でのスポーツ走行に適していることがわかります。
シートについても「すごくレベルが低い」「軽さだけに特化している」という厳しい評価があり、快適性よりも軽量化を優先した設計であることが実感されています。
燃費性能の実際
990Sの燃費性能は、カタログ値で16.8km/L(WLTCモード)となっています。実際の使用でも、軽量な車体のおかげで燃費性能は良好で、維持費の抑制に貢献しています。
スポーツカーでありながら実用的な燃費性能を実現しているのは、990Sの大きな魅力の一つといえるでしょう。環境性能とスポーツ性能の両立という点で、高く評価できます。
メンテナンス面での特徴
990Sのメンテナンスについては、基本的に他のロードスターと同様です。ただし、軽量化のために使用されている部品の中には、交換時に特別な注意が必要なものもあるかもしれません。
定期的なメンテナンスを怠らず、マツダの正規ディーラーでの点検を受けることで、990Sの性能を長期間維持できるでしょう。軽量化による恩恵を長く楽しむためにも、適切なメンテナンスが重要です。
まとめ|990Sは「走り重視」なら間違いない選択
ロードスター990Sは、軽量化による純粋な走りの楽しさを追求したグレードです。20kgの軽量化がもたらす軽快感や機敏なハンドリングは、他では味わえない魅力があります。
ただし、軽量化のために快適装備が簡素化されているため、日常使いメインの人や快適性を重視する人には向いていません。セカンドカーとして、または週末のドライブがメインの人に最適なクルマといえるでしょう。
購入前には必ず試乗して、990Sの特性が自分の使い方や価値観に合うかどうか確認することが大切です。走りの楽しさを最優先に考える人にとって、990Sは間違いなく満足できる選択となるはずです。